4/19/2010

MBA向けシリコンバレー就職術

先週、今年卒業されるMBAの方に、どうやってシリコンバレーで就職活動をするか、について話をした。前のエントリともかぶるが、以下簡単に。

「これをやったらうまくいく」という保証は残念ながらまったくできないが、「自分がもう一度就職活動するとしてもやはりこうする」というものです。


1. シリコンバレーに来る

前にも言ったが、ここではハイアリングは「今度Facebookでアプリ作りたいんだけど、いいエンジニア知らないかな?」「あ、最近会社起こした~君ができるんじゃないかな?」といった具合に、友達のネットワーク内で話が完結することが多い。そういうネットワークでみつからず、でもどうしても必要、という場合に外に告知を出す、というわけで、Web等にでてきている時点で情報は相当古くなっている。

MBAだと、「MBA向け」のリクルーティングが存在している。いわゆる学校での面接である。IT系の大手であれば、Top School専任のリクルーターというのが存在して、シーズンには学校を東から西へと行脚する。この手の面接に申し込むのは当たり前なのだが、これはいわばステップゼロで、これをやること自体はシリコンバレーに絞って就職したい場合ほとんど何もしていないに等しい。(もちろん、この手の面接で内定がもらえるなら万々歳で、できるならこれで一つは確保してくださいまし。)

シリコンバレーにはものすごい技術をもって、少人数で組織を回しているところがごろごろある。MBA的な感覚でいえば、こういうところに入って20代後半から30代にひと勝負するというのがおもしろい、ということになる。が、こういうところはわざわざTop Schoolに人を派遣するような時間もお金ももっていない。でも、彼らの多くもMBAは欲しいと思っている。こちらから出向けば、扉が開く可能性は十分にある。

これらの企業に対して、先ほど言った内輪でのハイアリングの機会をつかむためには、シリコンバレーに来て住む、ということがまずは重要。具体的には、MBAであれば、サマーインターンシップでくることができるのなら、絶対に1,2ヶ月はそれを使って来るべき。インターンシップはフルタイムよりは採用しやすいので、扉は開きやすい。夏直前に学校にくるスタートアップ系インターンの求人を利用したり、あるいは直接連絡して、インターンを申し込む。もしくは、大学の先生にBay AreaでOBがやっている会社を紹介してもらう、ということも、B-schoolであればできる。
すでに2年生でインターンシップを逃している場合は(経験上、図太くない人にはあまりお勧めはしないが(笑))卒業後にすぐこちらに越してきて、OPTを使って就職活動をする、という手もある。

授業期間中も就職活動できるという意味では、StanfordやBerkeleyはこの点若干有利になる。(でも、あくまで「若干」。決定要因には全くならないので、他の大学の皆さん、簡単にあきらめないように。)



2. 人に会いまくり、Partyにでまくる

来るだけでは、当たり前ですが何も動きません。当然のごとく、人に会いまくらねばならない。では、誰にどうやって会うか。Top Schoolであれば、Alumni Databaseが必ずあるはず。これを使って、かたっぱしから学校の先輩に会うこと。多くの学校では、Bay Areaに就職するOBOGが毎年大量に存在する。この方々があなたの頼みの綱になる。(この意味で、Bay Area以外のMBAであっても、チャンスは十二分にあるということになる。)その方に、ランチやコーヒータイムのひと時をいただき、アドバイスをもらう。頼めばあってくれる方々が驚くほどいらっしゃいます。また、あなたが外資系出身者でBay Areaにオフィスがあるなら、そのネットワークを使うのもアリ。

会うときは、電話でもいいが、先方がOkしてくださるなら直接あう方がいい。直接あった方が、あなたの人となりや、それまで何をやってきたかを伝えやすい。「今Bay Areaにいるので」と伝えれば、向こうも時間を割きやすくなる。

で、何を話すか。ちょっと相手の方の気持ちを考えればわかることではあるが、間違っても「仕事ください」みたいなことは言わないこと。忙しい時間を使って、何の面識もないあなたに、ただ後輩というだけで時間をくれているわけです。あなたのCredibilityはゼロなのに、そんなあなたに仕事をだすか、ということ。なので、話し方としては、「自分は~という仕事をやってきた、自分は~という理由でどうしても~関連の仕事をここでしたい。学校の先輩である○○さんから見て、私のようなキャリアの場合どういうことをすべきと思われるか、アドバイスをください。」といった感じ。

目の前でちゃんと話ができて、具体的なあなたのプロファイルがわかれば、(非常に)親切な方ならば、「キミのレジュメは~がよくない、~について詳しく書いてみなさい」であるとか、「僕の友達で、~をやっている人がいるから、彼のアドバイスもきいてみなさい」といったアドバイスをくれるかもしれない。いただいたアドバイスを真摯に受け止めて、自分の就職活動を修正した上で、さらに紹介していただいた方に会う、というのを繰り返していく。

あと、Partyにもでまくること。HarvardやStanfordだと、Networking partyが3ヶ月に一度くらいの割合で必ずある。学校のPartyや、友達経由でProfessional向けのPartyに出まくる。そういう場に出向いて、就職活動している自分の状況を率直に伝えると、そこから人を紹介してくださる先輩や友人が必ずいる。

こうして、とにかく人にあいまくり、アドバイスをもらい続けているうちに、自分のプロファイルにあった話にそのうち出会い、面接が始まる(Hopefully、ですが)ということになる。とにかく、いろいろな人に会いまくること。「Bay Areaにきたがうまくいかなかった」というのは、Alumni DBをチェックし切って、OBOGから紹介していただいた方すべてにお会いした後で初めて言えることで、ここまで到達するには実際に相当時間がかかる。


3. 注意点:自分がもっているものは率直にみせる。いただいた機会に感謝する。

これは僕の考え方だが、もっているもの、考えていることはできる限り率直に伝えた方が、Bay Areaではうまくいくことが多い。

遠い日本でかつて働いていて、最近MBA(Candidate)になったあなたは、ここの基準でいうと、最初の時点では「Potentialはあるかもしれない」その他大勢の一人です。Bay Areaでの経験値がない状況であなたが仕事をつかめるチャンスがあるとすれば、熱意によるところが大きい。忙しいスケジュールを割いて、極東の島国から来た若者に時間をくださった目の前の方に、貴重な機会をくださったことを感謝して、簡潔に自分のやってきたことと、将来に対する思いを伝え、アドバイスをいただいてみてください。

就職活動自体は、渦中にいるとちょっとたいへんだと感じるかも知れないが、終わってみると非常に楽しかった、ということになる。Bay Areaには、ここでしか会えないようなすごい方がたくさんいらっしゃいます。その人たちに時間をいただき、いろいろアドバイスをいただくことができるのは、MBAという学生の特権。ぜひ、エンジョイしてください。そして、もし運よくBay Areaでの就職が決まったら、自分が先輩にしていただいたことを自分の後輩にもしてあげてください。

4/04/2010

シリコンバレーでの就職活動、何が難しいのか?

今朝も、別の日本人の学生さんと話をした。彼の場合は、USでの就職相談。Stanfordの理系のマスター取得予定で、新卒として就職活動するらしい。1時間ほど、どうやって仕事探しをアメリカでするかをアドバイスした。


日本人だと、MBAにせよ、MSにせよ、「英語が下手」だとなかなかアメリカでの仕事は難しい、ということがまことしやかにささやかれている。正しい。非常に正しいです。僕も今も職場で苦労してますよ。

でも、「難しい」というのは、日本人がアメリカで就職できない、いや「しない」理由ではないと思う。最近転職した自分の経験から、トライすれば、十分にチャンスはある。最大の理由は、「日本人のネットワーキング能力」そして「マインドセット」の問題だと思う。


僕はHBS卒業後、そのままとりあえずシリコンバレーにきて、就職活動を開始した。とりあえず、OPTで働きながらキャリアをつなぎ、同時並行でビザをサポートしてくれる仕事を探し始めた。卒業にあたって、僕には一年先輩でおなじようにIT系でこちらでの就職活動に成功した先輩がいて、彼からいろいろとアドバイスをいただいた。いえ、今でも折にふれアドバイスいただいてます。本当に感謝しております。


で、彼のアドバイスは「とにかくネットワークをひろげなさい。」というもの。アメリカは学校のネットワークがそのまま仕事のネットワークになっている。とにかくいろいろな人にあってアドバイスをもらいながら、シリコンバレーで仕事を探している自分の存在を知ってもらいなさい、というものだった。そこで、僕はハーバードのサンフランシスコOB会に折に触れて顔を出し、いろいろなアドバイスをいただいた。また個人的にも先輩方にアドバイスを伺い、そこでもいろいろと教えていただいた。

ハーバードやスタンフォードといった有名大学はOB会がしっかりしており、卒業生は折に触れてネットワーキングパーティを通して、また個人的にコンタクトして情報交換を行い、お互いにささえあっている。人材雇用に関しても、「~という人が後輩にいて、~ができる」「~というポジションで今人を探している」という情報を常にネットワーク内で交換しており、それがきっかけで面接が始まることもある。

そしてこのネットワークは、開かれたものだ。ハーバードの人はスタンフォードの人につながっているし、スタンフォード卒で今Googleで働いている人は、Facebookに元同僚がいる、という感じ。大事なのは、どこかに入り口を見つけることで、ハーバードでもいい、Googleでもいい、とにかくどこかのコミュニティに入って、そこからネットワークを広げること。一箇所突破口を見つければ、あとは本人次第だ。


僕が思うに、日本人にとって、この「ネットワーク」の重要性を理解することが難しいのだと思う。日本ではまだまだ「終身雇用」的な企業が多く、社外のネットワークの重要性を意識する機会が少ない。大学院等でぽっとこちらにやってきて、下手な英語で積極的にネットワークを広げていくには、それなりの慣れが必要だ。(逆にいえば、自動的に「学生」という免罪符をもらって、いろいろな人に会うことのできるビジネススクールや他の大学院は、日本人にとって最高のトレーニング場になりうる。)

そのネットワークの場所で、日本人にとって難しいのは、「キャリアの見せ方」だ。ネットワーキングする上では、「自分は~~をやってきました」ということが必要。ただし、日本人で大学院でこちらに来た場合、多くは日本企業出身で、なかなかやってきたことを(日本を詳しくは知らないアメリカ人に)わかりやすく、かつAppealingに伝えることが難しい。でも、ここもいくらでも工夫はできる。たとえば日本のマーケットに興味がある会社の人には「自分は日本市場の~を知っている」ということを伝えることができ、日本市場向けの仕事のチャンスを教えてもらえたりする。
(ちなみに、外資系出身者はこの点非常に有利になる。まず、外資系大手は会社名が知られている。さらに重要なのはJob Title。外資系は多くの場合Job Titleが万国共通なので、相手に容易に自分のやってきたことを伝えられる。場合によっては、「日本向け」ではないポジションも紹介される。自分も、前職のキャリアのおかげで、今の職場ではUS, Latin Americaの戦略立案を担当している。)

ここまで書くと、「やっぱり日本人にはネットワーキングは難しいのでは」と思うかもしれない。ええ、その通りです。でも、僕が思うに、最後にものをいうのは熱意だ。「自分がアメリカで働きたい」という思いを伝え、謙虚に自分がやってきたことを話し、アドバイスをお願いすれば、多くの人がアメリカ人も日本人もアドバイスをくれる。僕も、数え切れない人に、信じられないくらい親身にアドバイスをいただき、助けていただきました。この場を借りて御礼申し上げます。就職活動を通して、僕はこの国の懐の深さを改めて知り、ますますこの国で働きたいと思うようになった。あなたがアメリカで働きたいならば、そこには何がしか、あなた自身のこの国、もしくはその仕事に対する思いがあるはずだ。その思いを率直にぶつければ、それに応えてくれる人は必ずいる。たとえ、10人にアドバイスをお願いして断られたとしても、11人目にチャレンジしてほしいと思う。

この国は、チャレンジする人に厳しいくらい平等にチャンスを与えてくれる。僕も、「こうやれば必ずうまくいく」ということは言えない。でも「この国での就職は、チャレンジするだけの価値がある」ということは言える。もちろん、アメリカで働くか、日本で働くか、どちらを選ぶかは、はっきりいって好みの問題だ。ただ、僕は、アメリカの大学に飛び込み、違う言語で学び、今また違う文化圏で就職活動をしようとする方を尊敬しているし、ぜひがんばってほしいと思う。

4/03/2010

ヒトとネズミは違うのか

さきほど、学生さんと話をした。(え、おまえ仕事してるのかって?してます、たぶん(笑)。自分がそうであった、今もそうであるように、誰かが話を聞きたいと言ってきたときは、できるだけ自分が学んだことを人に伝えようと、MBAを出てさらに思うようになりました。)

そこで、「自分の転機になったことはなにか?」という質問をいただいた。学生に向けて、ということで、僕が学生時代に考え、今でも記憶に残っていることとして、ネズミに関する思い出を。


僕は、大学時代心理学専攻で、半年ほど、ネズミを使った学習実験を行った。きわめて古典的なもので、ネズミがレバーを押すと餌が出てくるというものだ。実験自体はシンプルなもので特筆すべきものではない。ただ、半年間もネズミ二匹を世話していると、愛着がわいてくる。名前をつけ、日々その行動を観察していると、「ネズミにもこんなにも個性があるのだ」ということに気づかされる。ぼんやり、薄暗い実験小屋でそれらの世話をする中で、ネズミを通して動物の進化の過程の、最初の一ページを開いたような気持ちになった。

ある日、ふと、「自分たちヒトとネズミに、違いって本当にあるのか」ということが頭をよぎった。大学3年の暑い夏の日に、ふと頭に思い浮かんだ馬鹿な問いだ。でも、その問いは「お前は何をもって自分を自分と決めているのだ」と語りかけてきた。僕らは普段、自分は唯一無二の存在、個性をもっていると考え、日々いかにして「自分らしさ」を出せるかに四苦八苦している。でも、ほんとに、その「個性」はそこまで意味があるものなのか?ネズミにだって個性はある。ネズミが僕らにとって、(たとえどんなに愛着がわこうと)突き詰めればネズミでしかないのと同じく、僕らはどこまでいってもヒトという種の枠は超えられない。僕らが大事に思っている個性というものは、客観的にみればネズミどうしのちょっとした違い程度のものなのではないのか。

そんな考えが頭に居座るようになり、それは、実験が終わったあとも残った。就職活動が始まり、自分の居場所を探す中で、自分を含めたまわりの動きをみていると、ますます、自分の疑いは深まっていった。

四年生になり、卒業が近づく頃、別段、特別な出来事が起こったわけではない(もしくはすでに忘れているのかもしれないが)、気がつくと、「それでいいじゃないか」と思うようになっていた。本来的には違いなどないと思う方が、むしろ「自分」というものを取り戻せるのではないか、と思うように。ネズミがネズミであるのと同じように、ヒトはどこまでいってもヒトでしかない。自分は数多くいるヒトの一匹なのだ。


逆説的だが、そう思うようになって、自分にとって「ヒトであること」が見えてきた。

ひとつは、ケージを選ぶ、ということ。僕らは、自分のケージは自分で選ばなければならない。会社、住む場所、コミュニティ。学習実験のケージに入れられたネズミが、3ヵ月後には訓練前のネズミと別物になるのと同様に、僕らも入るケージによって、自分というものを変容させる。そして、幸か不幸か、僕らは自分のケージを(意識する、しないに関わらず)常に選んでいる。ならば、意識して選んでいこう、自分のケージを。そして、自分の変容は自分でコントロールしよう。

もうひとつは、僕らの長い時間だ。ヒトは、ネズミの何倍、何十倍も長く生きる。時間は、動物を変容させる。我々の多くは学習はヒトの特権だと思っているが、特権は学習自体にはない。ネズミにだって学習はできる。僕らに与えられているのはその時間なのだ。僕らはネズミよりはるかに長い時間を生きる。その時間を、意識して学習にあてるか、漫然としてすごすかは、その個体次第だ。ならば、日々少しでもいい、学習を重ね、個体として成長しつづけよう。長く生きることに意味をもたせよう。


そう思うようになり、時は流れ、僕のケージは東京、シアトル、ボストン、そしてシリコンバレーに移り、ゲームのスタートアップで新しいマーケットに挑戦している。今も、ちょっと寿命の長いネズミのチャレンジは続いている。